アジアの軍事バランスを崩す脅威か、それともただの「ポンコツ」か。
 中国初の空母「遼寧(りょうねい)」が4月、就役後初めての長期修理のため、遼寧省大連港のドックに入った。
 海軍が誇る同空母の実力については当初、日本でもさまざまな憶測を呼び、一時は「航行速度が遅く、戦闘機が離陸できない」との見方も浮上したが、その後、新鋭の艦載機がミサイルを搭載して発艦する様子を中国が公開し、決して飾りではないことを証明した。
 だが、話はこれで終わりではない。
 艦上戦闘機がロシア製のパクりで性能が劣るうえ、艦載の空中給油機がないなど、中国当局が公表していない“欠陥”が相次いで指摘されているのだ。
 海洋進出で軍事的脅威を演出する中国。
 その空母の本当の実力はどんなものなのか。
 「遼寧」は、旧ソ連で建造中だった空母ワリヤークを改造したもの。
 米軍事専門サイト「naval−fechnology−com」などによると、ソ連崩壊後の1998年にスクラップとして2千万ドルでウクライナから購入。
 修理や改装を行い、2012年10月から軍が運用を始めた。
 当初疑問視されたのは「本当に戦力になるのか」ということだ。
 まず指摘されたのは速力。
 中国の一部報道では、ウクライナからの引き渡し時には「エンジンは外されていた」との説が有力で、さらに中国には大型艦船に搭載する蒸気タービンエンジンや高性能ディーゼルエンジンの開発能力がないことから、速力はせいぜい約20ノットと推定された。
 これは艦載機運用の面でかなり劣る性能だ。
 また当初は、遼寧には艦載機を蒸気の力で打ち出すカタパルト(射出機)がなく、艦載機を風に乗せて発艦させやすくするため、艦は風上に向かって全速航行して向かい風(合成風力)を受けなければならない−といわれ、「戦闘機などの艦載機を離着艦させるのは難しい」とみられていた。
 こうした「能力不足」との見方は12年12月、中国海軍が離着艦訓練に成功した様子を映像で公開してからも同じだった。
 公開映像では艦上戦闘機J−15はミサイルなどを搭載しておらず、「軽くしないと飛べない」とみられ、張り子扱いは変わらなかった。
 ところが中国海軍は13年11月、一転してJ−15がR−73空対空ミサイルを搭載して離着艦訓練を行う様子を「チャイナ・デイリータイムス」など中国メディアを通して公開、張りぼてではないことを強くアピールした。
 また遼寧のエンジンについても、ウクライナでエンジン本体は取り外されておらず、配管や配線を撤去しただけだったことが明らかになった。
 電子装備など不備はまだ多いが、決して使い物にならないポンコツではないことが有力になったのだ。
 現在ロシアでは、遼寧(旧ワリヤーク)の同型艦「アドミラル・クズネツォフ」を運用している。
 ソ連崩壊による財政難で一時は廃艦同然だったが、プーチン政権成立以降、何度もドック入りして修理や改修を繰り返し、現役当時の性能を取り戻した。
 ロシア中央海軍公式のサイト「FLOT.COM」によると、同艦は13年12月17日、「第5次地中海遠征」と名付けられた遠距離航海に出発。
 14年1月15日にジブラルタル海峡を通過して地中海に入り、その後は北東大西洋を航行した。
 この間、艦載戦闘機とヘリコプターが計350回の発艦を実施したという。
 西方軍管区広報によれば、5月19日にムルマンスク港へ帰港する予定で、半年近い作戦行動が可能なことを証明した。
 艦載の戦闘機は空力的には世界最強のSu−27系列のSu−33で、ミサイルを搭載したうえカタパルトなしのスキージャンプ式甲板から発艦。
 兵装をフル装備する場合は機内燃料の搭載量を減らして重量を軽くし、発艦後に空中給油機で補う。
 これは米軍も使うノーマルな運用方式で、空母としての能力に不足はない。
 ロシア海軍は、ソ連時代末期には米国に対抗するべく大型空母の開発を模索。
 アメリカの独占技術でもある蒸気カタパルトについても大規模な研究実験施設を設け、ほぼ開発を終了していたとされる。
 艦上戦闘機のエンジンに関する技術も最先端。
 米国のステルス戦闘機F−35の艦載版「F−35B」の推力変更ノズルは旧ソ連が開発していた垂直離着陸戦闘機yak−141の技術を採用している。
 ソ連=ロシアの技術はホンモノなのだ。
 ひるがえって遼寧の艦載機J−15はロシア戦闘機Su33の中国版、そして遼寧も元はといえばロシア(ソ連)製で、潜在能力は捨てたものではない。
 ロシアの協力を得て本気で“大改良”すればクズネツォフ同様の正規空母になりそうなのだが、中国にはそれができないわけがある。
 そもそも中国とロシアはソ連当時も、同じ共産党政権ながら蜜月ではなかった。
 西側との冷戦まっただなかの1969年3月にはアムール川(中国語名=黒竜江)の支流の中州「ダマンスキー島」の領有権をめぐって中国軍とソ連軍の間で大規模な軍事衝突が発生。
 これが中国のソ連離れを招き、米中国交樹立につながった。
 その後中ソ(中露)の関係は次第に修復していくが、解決できない問題も多く残った。
 そのひとつが中国のソ連兵器の無断コピーだ。
 ソ連は当時も、ロシアになったいまも武器輸出大国。
 そして中国はソ連との関係悪化以降、自国向けに技術をパクって大量生産するだけでは飽きたらず、第三国に輸出してもうける図式が固定化している。
 先に紹介したダマンスキー島事件で奪い取ったソ連戦車T−62の技術をパクって“国産戦車”を開発し、パキスタンや中東諸国に輸出。
 有名なソ連製のAK−47自動小銃についても、中国はソ連のライセンスを元に生産していたが、ソ連崩壊後は「独自開発だ」と言い張ってライセンス料支払いを拒否した経緯がある。
 現在中国最新の戦闘機J−11Bも、もとはとえいばロシアのSu−27をライセンス生産した戦闘機を無断で追加生産したもので、ロシアは「知的財産権の協定違反だ」と猛抗議している。
 このパクり癖の集大成が遼寧に積んでいるJ−15だ。
 元々はソ連崩壊時にウクライナに残されたSu−33の試作機「T−10K」を、ウクライナから購入、コピーしたもの。
 ただしソ連=ロシアでは試作機で判明した問題点を改良して量産したが、中国は改良どころか心臓部ともいえるエンジンをコピーできなかった。
 結果、フランスの旅客機用エンジンなどを参考に開発した国産エンジン「WS10」を載せようとしたが、出力全開まで時間がかかるなどレスポンスが悪く、これでは戦闘機として致命的なことが判明。
 耐久性もAL31の400時間に比べわずか30時間との説がある。
 結局エンジンはロシアから「別の戦闘機に載せる」との名目で購入したAL31を搭載。
 パクった機体にオリジナルのエンジンという何とも情けない仕様となった。
 また機体も艦載機としての強度など多くの問題があったようで、中国はロシアに対しホンモノのSu−33を販売してほしいと打診。
 ロシアも商談の席に着いたが、その購入数を聞いてあきれた。
 中国が遼寧に搭載を計画している戦闘機は24〜36機。
 さらに現在オール国産の空母2隻を建造中で、飛行隊の編成を考えれば最低でも50機は必要。
 ロシア側も一旦閉じた生産ラインを再開するコストも考慮して40機の購入を打診した。
 ところがカナダの軍事専門誌「漢和防務評論」によれば、中国が希望した購入数はわずか7機。
 「パクるための見本にする」という意図があからさまな提案に、ロシアは販売を即却下。
 インターファクス通信などによると、今年に入って24機の売買契約が再浮上しているが、実現するかは不透明だ。
 中国空母「遼寧」に足りないものは、主力の戦闘機だけではない。
 艦載の空中給油機もなければ、空母の目となる早期警戒機もない。
 最新鋭のレーダーもなければ攻撃機もない。
 ほかにも空母や随伴艦の運用、編成など課題は山積だ。
 ロシアもかつて同様の課題に直面し、現在はそれなりに解決してアドミラル・クズネツォフを使いこなしている。
 そのロシアが「売る気満々」なのに、無断コピーに走る中国。
 その背景として指摘されるのが中国当局や人民解放軍の腐敗だ。
 賄賂が絶えない中国では、国内生産だと生産企業の指定などで懐が潤うが、外国製購入ではうまみが少ない。
 それだけに、ロシアの申し出に乗り気にならないのも当然か。
 「海洋進出だ」と武力を背景に威嚇する割には必要なものに金を出し渋るあたり、「自分たちだけが潤えば」という中国共産党幹部の本音が透けてみえるようだ。
 そんな実態を知れば、脅威に映る中国の軍備も案外、見せかけが多いということが分かる。