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私はあまりの暑さに目が覚めてしまった。
そして小用がてら、夕涼みでもしようと思ってベッドの上に身を起こした時、薄暗い寝室の隅にある空気取り入れ口の所に、人影が薄く、空いている寝台に寄り掛かるようにして見える。
私は初め何かの影かと思って、目をこすってみたのだが、確かに人影に見える。
(中略)
それがあまりに派手だったので、私はちらと横を向いて、またすぐその人影を見たが、そこにはもう人影が見えない。
なおもじっと見つめたが見えない。
(中略)
若い搭乗員が、
「班長、乗艦して初めての晩に、私はあそこの寝台に寝かされたのですが、夜中に誰かが私の胸にのしかかって来る夢を見、その次の晩にもやはり同じ夢を見たので、気持ちが悪くて今のところに引っ越したのです」
という。
ところがそこへ、ラバウル以来の翔鶴戦闘隊員として乗り組んでいた前田秀秋上飛曹(北海道出身)が入って来て説明してくれた。
(中略)
居住区のハッチは固く閉められ、応急員を4、5名あて配員していた。
(中略)
この1発の爆弾は、ちょうど密閉された搭乗員室の辺りを直撃していた。
中にいた応急員は壮烈な最期をとげた。
その後、搭乗員室は修理されたが、応急員が戦死した個所には幽霊が出るようになり、その寝台には誰も寝た者がなかったが、新しく乗り組んだ我々には黙っていた。